2020/03/02
相模原市にて ZENZA BRONICA 6×6 フィルムカメラ を出張買取させて頂きました。
1959年3月に発表されたゼンザブロニカは、カメラの設計製造に関しては素人であった吉野善三郎氏が、自らの理想とするカメラを製作すべく当時2億円もの膨大な私費と、8年余の歳月を費やして完成させたカメラです。
戦後の復興期、吉野氏はシガレットケースやオイルライター、女性用のコンパクトなどを製造する会社を経営していましたが、写真機に対する情熱は非常に旺盛で、東京で自らの写真機店を営んでいたほどでした。
しかしそれに飽き足らなかった彼は、世界一のカメラ、最高のカメラを自ら製作することを目論みます。
そして自社の技術力と膨大な私費を投入することでまさにそれを成し遂げたのです。
このときに発売されたゼンザブロニカは、ハッセルブラッドにとてもよく似た形状・サイズの66版フォーカルプレーン式カメラでしたが、当時ハッセルブラッドが持たない数々の機能、また今現在でさえ持つに至っていない機能をもを備えた高機能カメラでした。
つまり撮影後ミラーと絞りが元の位置に復元する、クイックリターン式ミラー・完全自動絞り、レンズの光学的バックを確保するため、ミラーは通常の跳ね上げ式ではなく、フィルム装てんはスタートマーク合わせ不要のオートマットなどです。
つまり当初より一眼レフ式カメラが備えるべき基本機能を全て実現しており、ニコンFの発表・発売がこの年の6月であったことを考えると、驚異的に先進的なカメラであったことが分かります。
また歴代のフォーカルプレーン式ブロニカの中でも、最も小型で軽量、またデザインも非常に優美でした。
なおこの初期型は「ゼンザブロニカ」と呼ばれ、1961年にS型(スタンダード)に切り替えられたときに、区別のためD型(デラックス)と呼称されています(ごく初期のものをZ型と分類する場合もあります)。
またゼンザブロニカのネーミングは、善三郎+ブローニー+カメラから作られたと言われています。
この初期型の発表当初より標準装着レンズはニッコールであり、50mm F3.5、75mm F2.8、135mm F3.5 の3本がカメラと同時に発売されています。
善三郎氏は最高のカメラには最高のレンズを装着すべきであると考え、ニッコールを採用しました。
上記の経緯から容易に想像されるとおり、当初はレンズを自社製造できませんでした。
しかし同年に発売されたニコンFとそのレンズの売上が好調で、日本光学はブロニカが満足し得る数のレンズを提供できませんでした。
そこでゼンザブロニカ工業は積極的にレンズ設計・製造の技術を蓄積し、次第にレンズを自社製に置き換えることにより、レンズシャッター式となった645判のETR 型からはニッコールを装着することはなくなりました。
ゼンザブロニカD型は、大変高機能かつ軽量コンパクトな、まさにデラックスなカメラでした。
しかしそのため内部の機構は複雑で、外装にも大変コストのかかるカメラでした。
そこでセルフタイマーやオートマット機構などいくつかの機能や構造をシンプル化するとともに大型化を図った、スタンダード型(S型)が1961年に発売されます。
そしてさらにフィルムバックを非交換式とし、レンズ繰り出し機構を脱着式ヘリコイドに変更するなど、より簡単化したC型が追加されるなど、よりシンプル化・低価格化を中心とした発展の道を辿りました。
その意味では機能の追加とそれによる複雑化を中心とする発展を遂げた他社にくらべ異質であるといえるでしょう。
ゼンザブロニカはその後、下降式ミラーを用いた基本設計をそのままに、より高信頼化を図った最終型の純機械式ブロニカたるS2型・C2型へと発展します。
特にS2型は改良を受けながら最も長期間製造され、フォーカルプレーン式ブロニカの代表的モデルと言えるでしょう。
そしてその後、根本的に設計を見直した電子制御シャッター搭載のEC型が1972年に登場します。
当時ニコンでいえばニコマートELが発売された年で、電子シャッターの有効性が認知されてきたころになります。
このカメラはさらに少し大型化されましたが、シャッターの助走距離を伸ばしたり、ギアを大型化するなどして機械的にはさらに安定したカメラとなりました。
しかし最も大きな変更は,降下式のミラー機構を廃し、上下分割式のミラー機構を採用した点でしょう。
上側の主ミラーは通常のカメラのように上方へ跳ね上げられ、下側のサブミラーは反対にボディ下へもぐりこむことにより従来の下降式の時のレンズが全て利用できました。
これにより同時に上下へ移動する重量物のバランスが取られ、非常にショックの少ないカメラとなりました。
またウェストレベルファインダを取り外したところに電気接点があり、露出計つきファインダを装着すると露出計がボディと連動するなど先進的機構も搭載されていました。
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